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Episode2チャーリーとの運命の出会い

Episode2 チャーリーとの運命の出会い

滞在期間は1週間。初日から農園やコーヒーショップを何件も回った。知れば知るほど、タイのコーヒー豆は、品質が販売価格に見合っていないことがわかった。アラビカ種に比べて味の劣るロブスタ種の栽培がほとんどだったし、収穫も適当だ。熟した赤い実と一緒に、まだ青い実までむしりとってしまう。出荷作業も雑で、石や木くずが混ざったまま売られる豆もあった。ホテルに戻り「帰って就活するか……」とぼやく夜が続いた。

Episode2 チャーリーとの運命の出会い

しかし、奇跡は起きた。たまたま入ったカフェが、珍しくハンドドリップのコーヒーを出していた。どんなものかと飲んでみると、驚くほど美味しかったのだ。ラベルに書かれた「FARMER:Chalee」「VILLAGE:Doichang」の2つを頼りに、車を走らせた。ドイチャン村のチャーリーを探せ!しかし、地図を見るとドイチャンは村ではなく山脈だった。

ドイチャン山を車で走り回ってみるものの、何の手がかりも掴めないまま時間だけが過ぎていく。休憩がてら、ふと目についた小さな食堂に入り、おばちゃんにチャーリーはいないかと尋ねた。「確かあっちの方にいるよ」という言葉に一瞬胸が高鳴ったが、車で向かった先にいたのはアカ族ではなくリス族のチャーリーだった。そんな簡単に見つかるわけがない。通訳の人が「無理だよ、もう帰ろうよ」と繰り返すのを無視しながら、山道を歩き続けた。

20分程歩いただろうか。森の中で「チャーリーの息子は友人だ」という夫婦に出会った。すぐに電話をかけ、その人物を呼んでくれた彼ら。その親切さが心に染みた。今度こそ本物かもしれない、いや、きっとまた別人だ……期待と不安が入り混じる中、大型バイクに乗ったノーヘルの青年が現れた。「俺がチャーリーの息子だ!」。

彼が連れて行ってくれたのは、間違いなく、僕たちが探し求めたチャーリー農園だった。豆を見ればわかる。これまで見て回った農園とは比べ物にならないほど、ていねいに選別されていた。僕たちはドイチャン山を訪れたその日に、チャーリーに出会えたのだ。奇跡としか言いようがなかった。

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