STORY
Episode3契約、輸入、融資、施工、
全てが試練だった
これ以上ない達成感と期待を胸に日本へ戻った僕たちは、起業の覚悟を決め、準備に奔走する。天野さんに報告に行くと、涙を流して喜んでくれた。でも、本当にたいへんなのはここからだ。チャーリーに何度メッセージを送っても返事が来ない。契約を進めるためには、現地へ行くしかなかった。アルバイトで渡航費をためてタイへ行き、交渉が少し前進して、また働いて……この繰り返し。
契約条件を決めるのも一筋縄ではいかなかった。彼らはランクの低い豆も一緒に買ってくれと言うのだが、彼らのためにも品質に妥協するわけにはいかない。タイの国内市場では、豆は安く買い叩かれてしまう。品質を高め、海外市場で正当な評価を得られる農園になってほしかった。何度も押し問答をした末、チャーリーが折れてくれた。そして10月15日、会社の登記をしたその足で空港へ向かい、豆を買い付けるため4度目のタイへ。銀行口座がない可能性を考えて、かばんには現金100万円を忍ばせていた。
無事にチャーリー農園で1トンの豆を発注し、現地の貿易会社と契約をして帰国した。しかし、ここにも落とし穴があった。貿易会社との契約範囲は大阪港到着までで、日本での通関や輸送には別の手続きが必要だった。1トンの豆はもう海の上……頭が真っ白になった。輸入代行業者に片っ端から電話をかけたが、全て断られた。なす術をなくした僕たちは、信用金庫の担当者に泣きついた。この時も色んな人にめちゃくちゃ怒られたが、紹介してもらった会社が情けをかけてくれ、12月半ば、1トンの豆が僕たちの目の前にやってきた。
この後も、失敗を挙げればきりがない。契約を交わす前に豆を発注してしまい、大量の在庫を抱えた。スケジュール調整が下手で、無理なお願いもたくさんした。めちゃくちゃ怒られた。資金繰りがうまくいかず、苦し紛れの嘘で乗り切ったこともある。そんな僕たちを、色んな人が助けてくれた。営業では天野さんの名前を勝手に使いまくったけれど、天野さんはもう怒らなかった。